「正体」は、カンザキイオリが作詞・作曲・編曲・歌唱を手がけた楽曲で、2025年8月12日にリリースされた4th EP「あの夏が飽和する。」に収録されています。この曲は、人生や人間関係、自己認識に対する深い哲学的思考が詰め込まれています。
歌詞
夏に痛いほど透過していく
呼吸全部が蜃気楼になっていく
笑えるよ
人生なんて失笑の連続だ
夕焼けの色や匂いなんてそれぞれなんだから
人と人が分かり合えるなんて滑稽だ
僕の思考も言葉も熱帯夜みたいな邪魔くさい棘だ
打ち上げ花火のように
どっか遠いとこで死んでくるよ
汗と同じぐらいの距離感で
感じろっていう罪悪感がずっと背中にへばりついてい
る
うるさいな
ちゃんと死ぬからさ
僕の蜃気楼が消えた後は
皆勝手にすればいい
どうせ碌な人生は送れない
落ちたメガネも捨て
世界を一緒に歩こうよ
死ぬとき死ねばいいよ
どこまでも行けるよ
夜が脆い幸せになっていく
生きた証が熱に溶けていく
あのね
誰も救ってくれなかった
誰も聞いてくれなかった
誰一人見てくれなかった
映画みたいな距離感が本当笑えるよ
嫌いだ
嫌いだ
嫌いだ
嫌いだ
皆嫌いだ
簡単に手を出すなよ
最後まで助けてくれやしないのに
生きることが正解とかそういう押し付けもういい加減
にして
同じ立場で同じ言葉が言えるなら言ってみなよ
寂しい苦しいじゃ終わらない
抱えきれないこの獣
この熱は誰にも奪われない
この汗は誰にも止められない
やっと気づいたんだ
しょうがないことはしょうがないし
何を悔やんだって変わらない
だって
僕は君の中で飽和している夏なんだから
笑えよ
何度だってやり直せるよとか
何度だって取り戻せるよとか
そういう言葉もう鬱陶しいよ
どんなに説教したって
結局他人でしかないってこと
知ってるんだよ
人間は立場から逃げられないってこと
それが本当気持ちいいってこと
抱え込んだ辛かったこと
隠し切った嫌だったこと
今更言うなよって
じゃあ一体いつ言えばよかったんだ
どうすればよかったの
どうしょうもないことばっかりの
人生を肯定するには
どうすればよかったって言ってんだよ
どうしょうもないよ
どうしょうもないのにね
ずるいよね
同じ痛みを誰にも共有できないなんて
そうか
君は
大人になっていくんだね
大人になっていたんだね
夏が希薄して遠くなっていく
君に言いたいことがあるんだ
生きて
生きて生きて
生きて生きて
生きて生きて
生きて生きて
生きて
そして死ね
歌詞の意味
「正体」は、人生や人間関係、そして自己認識に対する深い思考を歌詞に込めた楽曲です。歌詞には、人生の意味を疑問視する言葉が多次に登場します。例えば、「人生なんて失笑の連続だ」というフレーズは、人生がただの嘲笑の連続でしかないという、非常に悲観的な見方を示しています。また、「人との理解は滑稽だ」という表現は、人間関係における相互理解の難しさを鋭く指摘しています。
歌詞全体を通じて、歌手は自分の存在意義や人生の価値について葛藤しています。例えば、「僕は君の中で飽和している夏」というフレーズは、自分自身が他人にとってただの過剰な存在でしかないという認識を表しています。また、「どうしようもないことばっかりの人生」という言葉は、人生が満ち足りないものでしかないという絶望的な感情を表しています。
歌詞の感情表現
「正体」の歌詞は、非常に感情的な表現が特徴です。歌手は、人生の無意味さや人間関係の難しさに対するいら立ちや悲しみを、力強い言葉で表現しています。例えば、「誰も救ってくれなかった」「誰も聞いてくれなかった」「誰一人見てくれなかった」という繰り返しは、歌手が周囲の人々から理解されず、孤独を感じていることを強調しています。
また、「嫌いだ」「皆嫌いだ」という言葉は、歌手が周囲の人々に対する苛立ちや憎しみを表現しています。このような感情的な表現は、聴く者に強い共感を引き起こすものがあります。特に、人生に悩んだり、人間関係に苦しんだりしている人にとっては、この歌詞が自分の感情を代弁していると感じるかもしれません。
曲調と歌詞の調和
「正体」の曲調は、歌詞の内容と非常に調和しています。力強いリズムと激しいメロディーは、歌詞に込められた感情を強調しています。カンザキイオリの力強い歌声は、歌詞の悲しみやいら立ちをより鮮明に表現しています。
例えば、サビ部分の「生きて生きて...そして死ね」というフレーズは、激しいリズムに乗せられて、人生の無意味さに対する絶望的な感情が強調されています。また、曲全体を通じて、音楽と歌詞が一体となって、聴く者の感情を揺さぶる力を持っています。
歌詞の哲学的な深さ
「正体」の歌詞は、単なる感情表現にとどまらず、哲学的な深さも持ち合わせています。歌手は、人生の意味や人間関係の本質について、鋭い洞察を示しています。例えば、「人間は立場から逃げられない」というフレーズは、人間が自分自身の立場や状況から逃れられないという事実を指摘しています。
また、「同じ痛みを誰にも共有できない」という言葉は、人間が経験する痛みや苦しみが、他人には共有できないものであることを示しています。このような哲学的な思考は、聴く者に深い考えを促すものであり、「正体」を単なる歌詞ではなく、一つの哲学的作品として捉えることができます。
まとめ
カンザキイオリの「正体」は、人生や人間関係、自己認識に対する深い思考と感情を歌詞に込めた楽曲です。歌詞の意味は、人生の無意味さや人間関係の難しさに対する絶望的な感情を表していますが、同時に、哲学的な深さも持ち合わせています。力強い曲調と歌手の感情的な表現は、聴く者の心を深く揺さぶる力があります。この曲は、人生に悩んだり、人間関係に苦しんだりしている人にとっては、特に共感を呼ぶ作品と言えるでしょう。
